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『土になる』を読んで

2022年8月6日

土になる 文藝春秋 坂口恭平

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土になる [ 坂口 恭平 ]

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本書は筆者が畑を始めて92日間の記録である。

農業を通して筆者がどれほど変わっていくかが、極々私的な1人称の視点で書かれ
ている。

筆者はお金を稼ぐために農業をしているわけではない。生きるために農業をやって
いるのだ。

私達は呼吸をしている。それは生きるためだ。

私達は食事をしている。それも家族や仲間と食事をすることが大切だ。それも生き
るためだ。

人と話をして交流し、いろいろなものを交換し合う。この交換の一部が貨幣を伴っ
て行われる場合もある。それでも中心になっているのはお金を稼ぐことではなく生
きるために交流し交換するということだ。

本書は筆者が生きるために行動がつづられている。畑で野良猫ならぬ畑猫のノラジ
ョーンズとふれあい、農業の先生のタカギさんに教えを受け、家族や友達で収穫物
を分け合う姿が描かれている。どれも資本主義という観点からだけ見れば、ほとん
ど意味のない行為である。でも、それが生きることなのだ。

今後、大きくは資本主義が終わっていく。現在はお金を稼ぐということが殊更、評
価される世の中である。年収が、資産規模がいくらであるのかということが人間の
階層を分ける。

その変形で知識や文化の基礎的な素養の有無も階層を分ける。クラッシックな楽器
が趣味で奏でられるか。オペラについて楽しく談笑出来るか。古典文学について一
家言を持っているか。階層は教養の部分からも人々を分断していくのである。

そういった階層が大きく徐々に意味を無くしていきつつあるのが現在という世の中
なのだ。

時代が変わる時、人々は不安になる。そこに道しるべを探す。現在のインフルエン
サーも急速に終わっていくだろう。そして人々は探す。次に何がやってくるのかと。
私が坂口恭平に注目しているのは、それが次にやってくる最先端の生き方になると
感じているからである。

それはどんな生き方なのだろうか。それは沢山のファンを集めることや、出来る限
りお金を集めるということに、それほど執着しない生き方である。

自分を理解してくれる小さなコミュニティを大切にし、その中で無理なく生きてい
く。その中では無償で物やサービスが行き来する。年収何千万、何億円を目指すよ
りも、その方がよほど人間らしい生き方になる。この考えがこれからドンドン拡が
っていく。

この利益を求めない経済活動が拡大していく。それは金額ベースでの拡大というこ
とではない。金額で比べる時点で私達は資本主義の枠組みでしか見れなくなってし
まう。金額はゼロでも欠かせないもの、他とは入れ替わりが不可能なもの、それを
交換して喜び合う社会がやってこようとしている。それは本書の中で筆者の周りで
当たり前に行われていることだ。

未来が見えない時、人々は不安になる。それは誰しも同じだ。私は透き通った意識
で世の中を見つめて北極星を探している。坂口恭平は北極星の一つなのだ。

勿論、本人はそんな意識などないであろう。自分が幸せに生きる。そのためのサン
クチュアリを筆者は畑に見つけたのだ。

ただ自分が幸せに生きる。自分がどのように見られるのかということなど関係ない。
かと言って社会から孤立しているわけではない。身近な人達とは密接なつながりを
持っている。自分の近隣と世界全体との両方に対する新たなかかわり方を筆者は実
践しているのだ。

坂口恭平を見よう。そこに来るべき世界がある。


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