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『躁鬱大学』を読んで

躁鬱大学 坂口恭平 新潮社

躁鬱(そううつ)です。読めない漢字ですよね。

筆者は一言で言えばアーティスト。作家であり、建築家であり、絵描きであり、音
楽家であり、新政府内閣総理大臣でもあります。

新政府内閣総理大臣については、ここだけでは説明できないのでこちらの本をお読
みください。

独立国家の作り方

そして何といっても自分の携帯電話番号を公開して自殺志願者からの相談を受ける
「いのっちの電話」の創設者兼、相談者でもあります。今でも毎日、自殺志願者か
らの相談電話を受けています。

とにかく、すごいマルチな活躍の原動力は、彼が躁鬱病だということから生まれて
います。当然、躁鬱にはプラスの点だけではなく、マイナスの点も多く存在します。
躁の時は圧倒的な自信と存在感でバリバリ動く人も、鬱になると途端に自信を失く
して死んだ方が良いのではと悩み、沈み込んでしまいます。

本書は彼が躁鬱人のために、いかに生きるのかということを具体的、実践的に書い
たものです。筆者は躁鬱は病気ではなく体質だと述べます。だから躁鬱病ではなく
躁鬱人という人達が、この世には一部、存在しているのだという認識です。

これこそ正に「躁鬱人の躁鬱人による躁鬱人のための文章」です。

私は躁鬱ではありません。これをお読みの多くの人も躁鬱ではないと思います。し
かし、この本は非躁鬱人にも十分、面白い、役に立つものになっています。
先ずは非躁鬱人が躁鬱人への理解を深めることができます。自分とは違う論理で動
いている躁鬱人を、ただの迷惑な人として見るのではなく、膨大なエネルギーを上
手く処理できなくて空回りしてしまっているのだと見ることができます。

躁鬱人とは決してダメな人間というわけではなく、現在の社会の枠組みだと、上手
く実力が発揮できない人達なのです。ところが、ひとたび状況が変わって枠組みが
壊れてくると無類の実力を発揮できるのも躁鬱人です。社会が大きく変わりゆく現
状は躁鬱人が大活躍するチャンスの時代かもしれません。

筆者は普通に考えればマイナスである躁鬱人の気質を、プラスの変えていくような
考え方をあれやこれやと提示していきます。これは大いに驚いたり、笑ったりと非
常に楽しいものです。

実は、この考え方を変えるというのは私も日常的に行っています。厳しい時にマイ
ナスの考え方が生じてくるのは普通のことです。そんな時、私はそれを違った考え
方が出来ないかと日々いろいろやっています。どんなに絶望的な状況でも、それを
どのように捉えるかは、個々人が自由にできることです。そういった視点から見る
と筆者の転換能力はとてつもないもので、これは万人に役に立つものです。

普通の躁鬱人は自分のことを客観視できることは非常に難しいことです。しかし筆
者は長年の経験から、この客観視の能力を身に着けています。この客観視の能力の
おかげで筆者は躁鬱人としての自分をコントロールしているのです。

もちろん多くの躁鬱人にとって、それは簡単には身につかないものです。それは本
書の中の筆者の波乱万丈の仕事歴を見ても分かります。多くの人が想像も出来ない
ようなことを躁鬱の波に乗りながら筆者は乗りこなしてきています。こんなことを
行うのは、ほとんどの人にとって不可能です。

そこで筆者は、その経験から導き出された具体的で誰でも実践できる躁鬱対処法を
説きます。それは筆者が躁鬱に対して、根本の部分を捉えているからです。根本を
捉えていないと表面的な対処しか行うことができません。

これは合気道でも全く同じことです。どの分野でも物事の根本を捉えることが大事
なのです。

筆者の対処法は、その語り口は軽く、いい加減そうですが、実体験に基づいた言葉
は、しっかりしたものです。専門的な用語ではなく、誰にでも分かりやすい言葉を
使って話をします。本当に正しいものというのは、こういったものなのでしょう。

筆者のマルチな活躍ぶりや、自分の出来ることを実行するという態度は、これから
の人間の生き方のロールモデルの一つになると、私は思います。大きな組織に依存
して生きることや、一握りのトップ層に属することを目指すような生き方は、これ
からドンドン無理になっていきます。一つの仕事だけで生計を立てることも難しく
なっていくことでしょう。

筆者のようなマルチな生き方は「百姓」の生き方でもあります。「百姓」とは米だ
けを栽培している農耕民ではなく、季節や状況に応じて様々な仕事を複数、行いな
がら生計を立てていた人達です。新しい「百姓」として自分に出来ることをいろい
ろやりながら日々を楽しく生きていく。そんな生き方が今後はメジャーになってい
くことでしょう。

最後に本書の中の一節を記して、その素晴らしさの一端に触れていただきたいと思
います。

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本当の学問というものは「どうやって生きのびていくのか?」を具体的かつ実践的
に知り、自ら行動するという一連の行為そのものを指します。みなさんもここで学
んだことを、目の前の現実で今から実践し始めてください。

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さあ、みなさんも楽しい躁鬱大学で学んでみませんか。

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