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「三体」、 「三体2 黒暗森林」、 「三体3 死神永生」を読んで

三体三体2 黒暗森林 上三体2 黒暗森林 下、 三体3 死神永生 上 三体3 死神永生 下 劉 慈欣 早川書房

本書は2006年から中国のSF雑誌で連載され、2008年には単行本化された。三部作の
圧倒的なスケールのSF小説である。「三体」は太陽を三つもち、厳しい環境下に置か
れている三体星系から地球が侵略の危機にさらされる話である。

中国国内で圧倒的な人気を集め、世界各国の言語に翻訳され、世界中の著名人からも
称賛の声が寄せられている。

Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグやバラク・オバマ元米国大統領や映画監
督ジェームズ・キャメロンも、その一人。

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私が、この「三体」シリーズを読んだのは現代の中国人の意識を知りたいと思ったか
らだ。以前、アインランドの「水源」を読んだ。

https://aikidomori.com/post-103/

「水源」は米国が第二次世界大戦後に覇権国として勃興していく米国民の意識をよく
表している。「自由への渇望と個人への信頼」が、当時の米国人が魂から渇望してい
るものであるということがよく分かった。

「三体」から読み取れる中国人の意識は何であろうか。「三体」を貫いている意識は
圧倒的な科学信仰と今までの人道的な価値観からの脱皮である。

「三体」はSF小説ではあるが、現在の科学的な知見に沿った中で話が展開する。その
科学的知識が圧倒的である。SF小説とは言っても、このような小説を多くの国民が楽
しむことが出来るという中国人の知的な土台に驚かされる。そして、そのスケールが
時間的にも空間的にも圧倒的である。

圧倒的という言葉を使うしかない自分の文才になさにあきれるのだが、それにピッタ
リした言葉が見つからないほど、圧倒的なのだ。例えば、映画でスケールの大きな作
品がある。そのスケール感は、あくまで観客が十分楽しめる程度のスケール感に設定
してある。本作では、これで読者がついてこれるのかと、こちらが心配するほどスケ
ールが大きいのである。中国人の多くの読者がそのスケールにもついていったことは
言うまでもない。

SFとはいえスターウォーズやスタートレックのように現在の科学から隔絶した世界が
描かれているわけではなく、あくまで現在の科学の延長線上でストーリーが展開する
のである。瞬間移動やワープ等の荒唐無稽な科学技術を使用することなく、あくまで
も光速度一定の宇宙法則を守りながらの展開が続く。その条件の中でも多くの途方も
ないアイデアが展開される。そして、それを楽しむことができる中国人の科学的知識
の底力の凄さを、まざまざと思い知らされる。

もう一つは現代の人道主義が時代遅れなのではという問題提起が頻繁になされる点が
特徴的である。本作品の中では現代の人道主義が地球スケールでの思考から生み出さ
れたものであって宇宙時代には通用しないのではということを再々にわたり示唆して
いる。

何十年、何百年といった時間的スケールや宇宙規模の空間スケールの中では一般大衆
の愚鈍さと、それを超えていくエリート主義が描写される。地球規模、宇宙規模の問
題は現在の西洋文明では根本的に解決できないと中国人は恐らく考えている。中国人
が今までの西洋中心の世界観を堂々と超えようとしていることが伺われる。現在の中
国人の凄さと自信の一端を表しているようだ。

ストーリーは人類よりも圧倒的に科学技術の進んだ三体人が地球侵略を企てるところ
から始まる。ただし三体の宇宙艦隊が地球に到着するには400年以上かかる。その間
にも三体世界は地球の情報を収集するスパイを送り出す。果たして地球人類は侵略を
食い止める方策を編み出すことができるのか。

これ以上はネタバレになってしまうので詳細は書かないが、本作品の中では「フェル
ミのパラドックス」が重要な役割を果たす。これは核物理学者のエンリコ・フェルミ
が提唱したものだ。

「宇宙には多くの知的生命体が存在する可能性があるのに、どうして今までそれが見
つかってないのだろうか」という疑問だ。その疑問に本作品はある答えを出し、それ
が作品を貫く宇宙観となっている。

とにかく、読んでみていただければ、その圧倒的な世界が理解できるはずだ。一気に
読んでしまえるほど面白い作品である。ただ、慣れないうちは人名を見て、それが中
国人名なので性別が判断しづらいということがあった。太郎やジェーンならば説明無
で性別が分かる。ところが中国人の名前はそれほど慣れてはいないので判別に困る。
その問題も読み進むに従って気にならなくなっていく。

また本作品では小説でしか出来ない可能性を感じた。本作品は映像化が最も難しいも
のになるだろう。仮に映像化してもファンからは、それが成功したと判断されること
はないかもしれない。

本作品中での異星人や宇宙の描写、次元を超えるスペクタクルは、私達の想像を超え
るものだ。それらの世界は私達の認識を超えるものとして描写されている。いくら表
現をしても、それが実像を結ぶのは私達の想像上のものでしかない。いくら想像して
も追いつかない世界が、そこには存在する。想像がつかない本当の世界が存在するの
であろうが、そこには自分の想像力が追い付かない。小説を読みながら永久に本物に
触れない自分を発見する。そして触れられないからこそ、その深遠さを理解できるの
だ。

もし稚拙な方法で映像化してしまえば、その映像は各個々人の想像の世界よりも数段
劣るものになってしまうだろう。これは文章という想像力を羽ばたかせる分野でしか
表現できないストーリーなのだ。

文章によって想像させることでしか表現できない世界が本作品の中には存在する。こ
れは文学の可能性の一つでもあるのだろう。

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