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「閔姫暗殺」を読んで

2020年8月13日

閔妃(ミンビ)暗殺―朝鮮王朝末期の国母  角田房子  新潮社

日本人は1895年に起こった「閔姫暗殺事件」のことをほとんど知らない。在朝鮮の日
本公使が私人の立場で衆を頼んで当時の朝鮮王朝の王妃を殺害した事件である。その
後も事件の容疑者達は大きな罪に問われることなく出世していく。

昨年、日本と朝鮮の問題について長期的な視点から記事を書いたが
2019年の私の誕生日の長すぎる一言
「閔姫暗殺事件」は両国間の長い歴史の中で日本が行った最悪の犯罪行為であろう。

今の日本で中国大使やアメリカ大使がプライベートで皇后を殺害したらどうなるか想
像がつくであろうか。そんなとんでもないことを日本は行ったのだ。正確に言えば日
本が行ったわけではない。国家中枢の意図を忖度した三浦公使が勝手に暗殺を行った
のだ。そして、その罪は厳しく問われることはなかった。

当然のことであるが、現在の朝鮮半島の人々も、この罪を許していない。そして、も
っと悪いことは日本人は、その事件自体を知らないということだ。両者の立つ位置は
限りなく遠い。

本書は閔姫殺害までに至る朝鮮史を描く。
私は、この歴史を日本と朝鮮という支配するものと支配されるもののという二つの立
場から読んだ。

支配する側から見れば、朝鮮の動きは個々人が懸命にやっている点は理解できるが、
国家としての一貫性に欠け、迷走状態を繰り返しているのが見える。

閔姫自身にしても王朝の中での自分の地位、閔一族の利益が第一で、その次に、その
利益の源泉となっている王朝の利益というようになっている。国家としての利益や、
まして民衆の利益など一番最後になってしまう。

閔姫と舅の大院君の内紛が日本や諸外国の介入を招き、朝鮮王朝の没落を加速してい
くのである。これを強者の立場から見るなら、朝鮮民族は何と先が見えないダメな人
達なのだろうとなってしまう。数十年、早く開国した日本と大きく道が分かれる。支
配するものと支配されるものの差は途方もなく大きい。

しかし、これを支配される側から見てみると見方も変わってくる。朝鮮側の動きもや
むを得ないと理解できてしまう。封建社会から近代へと急激な移行を強いられる中、
各人が懸命に生きた結果、それぞれのベクトルが打ち消し合い、混乱を加速させ、混
迷を深めていく。

閔姫が日本の圧力を回避するために清朝やロシアに接近したのは無理のないことであ
ったろう。そして朝鮮人の中にも閔姫を支持する人や反対する人もいる。それぞれの
事情は心情は理解できる点もあるが、結果は悲劇的である。

これを見て当時の朝鮮を馬鹿にする人もいると思うが、冷静に考えれば現在の日本の
方が壊滅的である。

支配される側の論理を日本に照らして考えてみれば、物事が自分の問題として見えて
くる。現在の日本は米国の属国である。ところが、多くの人は米国からの独立など考
えてもいない。

日米同盟を何が何でも守らなければいけないという保守派も憲法9条を守らなければ
いけないという左派も両方とも米国への依存を維持しようとする点は同じである。

駐留なき日米同盟を目指そうとしていた鳩山政権は日本中から国防のことが分かって
いないと総スカンを食った。
民主党を殊更こき下ろす現在の安倍政権の外交の最大の目標はトランプのご機嫌を伺
うことでしかない。

これに比べたら、無残に失敗するも、抵抗を続けた当時の朝鮮人の方がよほど、しっ
かりしている。いや現在の日本人ならば、こういうかもしれない。

「失敗するくらいなら従って上手いことやった方が得だ」

現在の日本人に一番欠けているのは魂の叫びかもしれない。現在の日本人は閔姫の時
代の朝鮮人に勝っているのだろうか。その問いに真剣に向き合うことが必要なのだろ
う。

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