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E-mail Magazine Archive(3/Jun./2019)

2019年6月16日

森智洋の部屋メールマガジン 第93号の記事の一部です。

最近読んだ本の紹介

私は平均して週に2、3冊の本を読んでいます。
乱読に近いのですが、その中から面白かったものを書いていきます。
政治・経済・歴史・科学・宗教といった分野が中心です。

孤独死大国    菅野久美子  双葉社

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誰にも看取られずに一人で亡くなる方が現在、日本で年間3万人にもなるそう
です。そして、なお恐ろしいことには約1000万人が社会的に孤立して生活し
ていることが疑われる(筆者の試算による)そうです。

本書を読むまでは、孤独死は本人は死んでしまうのだから問題でもないし、人
に看取られようが、そうでなかろうが最期に死ぬときは独りでしかないと、そ
れ程、考えることはありませんでした。ところが、そうとばかり言えない現実
があることを教えられました。

まず、孤独死は発見までに時間がかかるということです。数週間後、数ヶ月後
に遺体が発見されることも珍しくありません。そんな遺体はどうなっているで
しょうか。人間は死ぬと溶け出すそうです。そんな遺体は、もはや生きている
姿を留めていないでしょう。遺族があまりにも惨い姿である遺体の顔を確認で
きない場合もあります。また死ぬと何処からかハエがやってきて卵を産み付け
るそうです。そこでウジがわきます。そのウジがハエになり、また卵を産み付
ける。これが何世代も繰り返されます。何世代繰り返されたかで死亡時期が判
明するほどです。

このような現場は100万以上かかる特殊清掃を入れなければ原状回復は無理です。
ひどい場合は完全には回復が不可能な場合もあるでしょう。回復しようが、し
まいが、その物件の価値、また近所や、その建物全体の価値にまで影響するも
のなのです。

そして孤独死は家族、近親者にも傷跡を残します。自分達の態度は果たして正
しかったのだろうかと。孤独死に接する他人もこう考えます。彼らは満足して
死んでいったのだろうか。

本当に孤独死をした人が、どのように感じていたかは決して分かりません。ただ
残された人たちが、どう想像するかだけです。その想像の中では孤独死を幸せと
思う人などいないでしょう。晩年を孤独に過ごしていたということがハッキリし
ています。多くの人が孤独死を恐れる理由です。

それは資産家であるからといって逃れられるものでもありません。本書にはタワ
ーマンションで金銭的には裕福であったであろう人の孤独死の現場も出てきます。
本当のことは分かりませんが、幸せであった最後だったのでしょうか。

本書には孤独死を防ぐ様々な試みが紹介されています。団地の中の人間関係を再
構築して孤独死を防ぐ試み。読書会を通じた人間関係の再構築。どれも素晴らし
い事業で、その中心になって活動する方々も魅力的な人です。

これらの活動を見ながら老齢化の進む国は今後、「死」の価値を重視するように
なっていくのではないかと思います。

孤独死は、これから恐ろしい勢いで増えていくでしょう。そして様々な人が、そ
の抑止に力を尽くさねばならなくなっていきます。それは自分の所有している物
件の価値を守ることであったり、親族で面倒な問題を抱え込まないような意図で
あったり、近隣で、そんなことが起こったら気持ちが悪いという思いであったり、
自分の将来を考えていたたまれなく成るという行為であったり理由は様々でしょ
う。

現代において金銭の価値が絶対的に評価されるのは、人々が望むもののほとんど
が金銭で贖われるからです。ところが、多くの人が死を意識した社会では、それ
は異なります。満足のいく死までの道程は金銭的なものだけでは得られないから
です。それは面倒な人間関係を必要とします。現代は「死」について考えること
を避ける世の中です。それが変わっていくのでしょう。

人間が経済的に合理的に考えて行動するという資本主義の根幹が、直ぐ未来の世
界では揺らいでくるのです。人間がどのように死ぬかを考えて生きていく。それ
は決して暗い未来ではないような気がします。

若者が成長し、ドンドン未来が幸福に輝くような未来ではないでしょうが、人が
どのように生き、死んでいくのかを考えている悪くない未来。私には、そんな未
来が見えてきます。

私は「死」を意識することが必ずしも暗いものではないと思います。「死」を意
識する。それは最期まで、どう生きるのかを考える世の中だからです。

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